今注目のワード「リスキリング」とは?
2022.11.30
「デジタル化」が進む中で、新しいスキルを身に着けようと思うことがあるでしょう。一方、職場から求められてスキル獲得を目指すケースもあります。
「リスキリング」と呼ばれ、新たな業務に就くために、または業務内容・環境の変化に適応できるように、必要なスキルを身に着けることです。
リスキリングが注目されている理由や事例、考え方などを紹介しています。
リスキリングとは?
リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と、経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、定義されています。( 経済産業省/第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会より)
近年の目覚ましいテクノロジーの発展により、働く人の環境は大きく変わってきています。例えば、工場での製品製造や小売業での商品管理などは、自動化が進んで、多くの業務をロボットが担うようになりました。ここで見落としてはならないのは、自動化に伴って、ロボットのプログラム変更やメンテナンスをしたり、システム管理をするなどの、「新しい業務」が発生してくることです。しかもこのような業務は、専門の知識・スキルを必要とします。
そこで企業が従業員に対して行なう、新しい知識・スキルを学んで身に着けてもらおう、という取り組みがリスキリングなのです。
リスキリングは主に、DX推進推進において語られるますが、デジタルの専門知識や技術を身につけることに限ったものではなく、統計解析やマーケティング、語学スキルなども含まれています。
リスキリングが今、注目されている理由
現代は「第4次産業革命」と呼ばれ、昨今の企業のDX化の推進により、比較的スキルの必要のない一部の製造、販売、サービスなどの仕事に加え、バックオフィス業務などについてAIにより代替される可能性が出てきました。
それに伴い、多くの労働者の業務が失われる一方、新たな多くの業務が発生してくるのですが、そこには高度な専門的スキルが必要となります。外から雇い入れるにしても、デジタル化・自動化に対応できる高度な技術を持った人材は市場で不足しています。
そこで、今いる従業員に必要な知識やスキルを身に着けてもらえば、ただでさえ人手不足な現状で新たな人材を探す必要もなく、解雇もしなくていい。企業と従業員双方にとっての生き残り戦略として、注目されているのです。
リカレント教育・生涯学習との違い
リスキリングとは
・企業が人材戦略として従業員に学びの機会を与える取り組み。
・「これからも職業で価値創出し続けるために」「必要なスキル」を学ぶことが目的。
・従業員の配置転換・業務転換をするための、スキルチェンジを行うこと。
リカレント教育とは
・今の仕事で必要なスキルを身につけるだけでなく、定年退職後のことも視野に入れる。
・「教育」と「就労」のサイクルを繰り返す。
・「自らの意思」で別のスキルを身に着けていく。
生涯学習とは
・各個人が生涯にわたって自発的に行う。
・スポーツや趣味も含まれる。
リスキリングの必要性と国内外の事例
リスキリングの必要性
世界経済会議(ダボス会議)で、第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれると予想されています。
業務の効率化、生産性や正確性の向上を行い、企業成長につなげるにはDXの推進が必要です。しかし、DX推進を担う、デジタルスキルを保有した人材は大幅に不足しています。
また、高齢化や人口減少により、労働人口は減り続けているので、今いる従業員を安易に解雇してしまうのは得策ではありません。そこで、企業が自ら育成するリスキリングの必要性が高まったのです。
リスキリングを行う企業のメリット
業務の効率化…専門の知識・スキルを身に着けた従業員が増えることで、DX推進を加速、各業務の効率化が図れる。
従って従業員の残業改善や休日取得にもつながり、従業員満足度の向上が期待できる。
・従業員のモチベーション向上…社内の従業員に対してリスキリングすることで、同時に、企業のビジョンや経営計画の浸透も図れる。その結果、従業員の目標の明確化やモチベーションアップが期待できる。
・新たなアイデアの創出…最先端の知識・スキルを身に着けられ、対応できる業務・発想を広げられるため、新たなアイデアの創出につながる。
国内外のリスキリング事例
日立製作所
日立製作所グループの人材育成を担う日立アカデミーでは、デジタルスキル向上に向けた多種多様な学習プログラムを開発。約100コースあるプログラムのなかからデータサイエンティスト、セキュリティスペシャリストなどのエキスパートが必要に応じた講座を受講しています。
日立製作所では、事業推進のためのDX化をけん引できる人材が不足していることを課題とし、企業独自でDX人材の育成を行っていく方針です。リスキリングを積極導入し、日立製作所グループの全従業員16万人を対象とした教育・研修制度の確立を行っています。
富士通株式会社
国内グループ全8万人のリスキリング(学び直し)にアクセルを踏む。教育投資を4割増やして、必要なスキルを社員が自ら選び、学べる研修を拡大。キャリアの道筋が明確な「ジョブ型雇用」との連動も広げ、学ぶ動機を高める。働き手の成長と会社の成長をつなげる。(日本経済新聞2022年5月24日)
デザイン思考やアジャイル強化の施策を打ち出して、リスキリングや社内システム整備などに5年間で5,000~6,000億円を投資すると発表しています。
住友商事
住友商事株式会社は、AIデータ解析ツールやAI人材育成プログラムの開発・販売を手掛ける株式会社aiforce solutionsに追加出資しました。
住友商事は、2019年にaiforceと資本業務提携し、住友商事グループのさまざまな事業領域へのAI導入を推進、AMATERAS RAYによる事業の高度化を加速させています。
同時に全社の人材育成にもAI活用を取り入れており、住友商事単体のみならず、グループ会社も含めaiforceのプログラムを通じた人材育成を行っていきます。(住友商事株式会社2020年09月14日)
Amazon
2025年までに、米国アマゾンの従業員10万人をリスキリングするという計画を発表しました。
従業員1人あたりに約75万円を投資し、非技術系の人材を技術職に移行させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー(Amazon Technical Academy ※技術アカデミー)」や、 IT系エンジニアがAIなど高度スキルを習得するための「マシン・ラーニング・ユニバーシティ(Machine Learning University ※機械学習大学)」などの各種プログラムを準備。
デジタルスキルの全体的な底上げを目指しています。
リスキリングとキャリアはセットで考えよう
リスキリングは会社が従業員に行うものとはいえ、希望者を募る形で実施されることも多いようです。
今のままではいずれ仕事がなくなるかもという不安を抱えていたり、今の業務ではこれからのキャリアが描けないと頭打ちを感じている人、もっと必要とされる人材になりたいと思っている人などには、キャリアアップやキャリアチェンジのいい機会でもあります。
これから自分はどうありたいのか、どうなっていきたいのか、そうしたキャリアとセットで考えていかないと、とりあえずリスキリングに飛びついたものの、挫折してしまったり、思っていたのと違う業務に携わることになって悩んでしまったりということにもなりかねません。自分の方向性や適性とセットにして考えていきましょう。
まとめ
リスキリングは、今の激動の時代で、企業が発展存続し続けるため必要な取り組みだといえるでしょう。そしてそれは、会社で働く人にとっても、キャリアを広げる大きなチャンスです。 リスキリングという制度を利用して、価値を生む人材なることで、重宝されます。
また、リスキリングを取りいれている会社は、新しいことを取り入れるのに積極的で柔軟性の高い会社とも言えそうです。会社選びの目安の一つにしていいでしょう。
「リスキリングに注力している会社で働きたい」など自分の価値観に合った会社を探すことが転職を成功させる方法の一つと言えます。
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